受賞5件以外では、床や野地板の加工に特化した合板加工機、木材工業におけるIoTの一つの形を呈示した加工材自動積込装置、刃物による重大事故を防止する装置を組み込んだ丸鋸盤などが選考過程で注目された。
 今回の審査では、何度も受賞歴のある出品者からの出品物を選考されるとともに、海外製品も含まれている。国内の展示会で海外企業を顕彰する意義については議論もあるが、この技術優秀賞を真に国内企業の振興に役立てていくためには、海外製品も含めて申請件数を増やすことが必要であり、その方向で引き続き検討されることを望みたい。 また、木材利用の拡大、国産材需要の拡大が叫ばれて久しいが、木材の利用は木工機械を含めた機械システムを抜きにしては始まらない。経済性、効率性、生産性にしっかり裏打ちされた機械やシステムが存在しない限り、真の意味で木材利用の拡大はあり得ない。最近話題になっているloT(モノのインターネット)は木材加工の分野においても避けられない流れであり、既存技術の改良や高度化にとどまらない、大胆な試みを大いに期待したい。(一社)日本木工機械工業会が主催するこの展示会が、このような新しい技術や情報の発信、同業あるいは異業種間の交流などを通じて、木材産業を発展させる礎となることを大いに期待したい。
 同展には、木材加工機械をはじめ刃物及び工具、乾燥機器、バイオマス関連機器など林業・木材関連の最新技術が集結した。また、時代を先取りするセミナー・シンポジウム・講演会等や、主催者が今回展で初の試みとなつた「ウッドワンダーランド2017」のタイトルで、子どもも大人も学べる・楽しめるイベントを2号館で開催した。会期中の来場者は2万人余りと、前回展2015(平成27)年の来場者数を約15%上回る、木材産業全般の好況を反映してか久々に賑わいをみせた。
 主催者発表による出品者数は、140社(団体・機関含む)、出品小間数876小間(同837小間)、出品国数10ヶ国・地域、参加企業は日本、ドイツ、イタリア、オーストリア、ロシア、フィンランド、オーストラリア、カナダ、韓国、台湾の多くを数えた。
 今回は、CLT(直交集成板)という話題の材料に対応する加工機械やカットサンプルなどが会場内に増え新たな牽引力となったようだ。それに呼応するかのように出品物や来場者数は共に増え、開場と同時に来場者は日毎に絶えることなく担当者は対応に追われる光景も見られた。開場前にささやかれた出展者間の今回展はどうか?の心配を払拭していたようだった。前回大きく小間を取り出品していたメーカーも今回は小間の縮小がみられたが、その要因は生産が多忙を極め出品機械の調整がつかなかったとも聞いた。特に目立ったのは輸入機械・機器を取り扱う企業の出品機も増えたのは特徴的なことだった。ちなみに会場は展示ホール3号館に機械機器類をフルに使用した。
 2号館に設営した「ウッドワンダーランド」に産官学展示コーナー、特別展示コーナーにヒノキの間伐材で製作したカローラなどやCLTパネルを用いたオープンステージでのミニトークやライブなど盛りだくさんな内容にイベント効果を上げていた。
 なお、次回は2019年の開催を予定している。
 会期初日の27日、午前8時45分から交流センターエントランスホールでオープニングセレモニーが開かれた。まず同展の井本希孝実行委員長(飯田工業㈱社長)の開会宣言に続き来賓祝辞、テープカットが行なわれた。
開会宣言
 今回は後援をいただいた名古屋市の河村たかし市長、経済産業省、林野庁、リグナハノーバーからの来賓を始め、関係団体の協力を得ての開催を感謝しています。そして時代のテーマとしている「IoTやロボット」の応用が広まったこと、そして木材の良さをさらに知って欲しいと願い、隣接する2号館に「ウッドワンダーランド2017」をテーマに全国の学究機関や、機械業界のエンドユーザーの出展協力、次世代を担う地元高校生の見学に夢と希望のある産業であること、また、お子さんたちも楽しめる展示会として、今日からの四日間が皆さんにとって幸せな空間と時間を感じ取っていただければ幸いです、と開会宣言をした。
 テープカットは、河村たかし市長、経済産業省産業機械課、林野庁木材産業課、同展実行委員長、そして業界関係団体、リグナハノーバー広報担当の各氏が代表してハサミを入れ、開会を祝った。

 技 術 優 秀 賞 5 点 決 ま る
 技術優秀賞は28日に発表され、翌29日午前9時30分から贈賞式が2号館内特設ステージで行なわれた。受賞者には賞状と特製ブロンズ像が贈られ、その栄誉が称えられた。
 この技術優秀賞は、木材産業および関連産業の発展に寄与する独創的かつ付加価値を高める優秀製品を顕彰するため、1973年に創設され、今回で23回目となる。
 審査方法は、出展者から申請のあった18点の出品物について審査した。審査は木材・木材加工の学識経験者および木工機械の需要家からなる14名の審査員が行ない、出展者から申請のあった18点の出品物について審査した。提出された書類を各審査員が評価する個別書類審査、会場における合同現物審査を経て、技術優秀賞にふさわしい出品物として次の5点を選考した。
技術優秀賞審査講評
審査員長 奥村正悟・京都大学名誉教授
 選考は、(1)技術水準(2)独創性(3)経済効果の3項目を中心として出品物を評価した。技術水準には、品質、開発の合理性や難易度のみならず、安全や環境に対する配慮も含まれる。独創性には、部分的に優れた独創性があるものや萌芽的であっても将来性が見込めるものも含まれる。経済効果については、付加価値や歩留まりの向上、省資源・省エネルギー・省力化、廃棄物処理、木材の有効利用への寄与などが含まれる。今回選考された5件(五十音順)についての評価は概ね以下の通りであった。
3Dターニングマシン=旭川機械工業株式会社
 回転刃物に超硬チップソーを用い、工作物の回転と回転刃物の送りをNC制御する木工倣い旋盤の一種で、チップソーによる微小な切込みと工作物端面のルータ加工を組合せることにより複雑な三次元形状加工を実現した技術水準、独創性などが評価された。
ノバパネル プロ=兼房株式会社
 丸鋸の寿命を短くするヤニ(樹脂成分)の付着を低減することを目指して開発された(PCD)チップソーで、鋸表面の摩擦係数を低減するための新しい研磨方法や表面処理を開発した技術水準、ユーザー検証から期待できる寿命延長による経済効果などが評価された。
無人製材設備“クリアシステム-i”=キクカワエンタープライズ株式会社
 
生産性と歩留まりの向上を目指し、原木の自動計測、木取りの自動化、ツイン帯鋸盤による挽き材などを組み合わせた製材システムで、IoTを用いた機械の保守や安全対策の先進性、小経材から大径材までの製材を無人化した技術水準、それらによる経済効果などが評価された。
全自動カービングサンダーSYSTEM T5C 1350 GGFBD+b=DKSHジャパン株式会社
 工作物を二つの鉋胴(周刃が凹凸を有する)、帯鋸、金属ブラシによって加工することにより、工作物の表面に種々の凹凸を自動生成するための複合機で、二つの鉋胴の搖動によって凹凸を形成する独創性と技術水準、内装材としての木材利用を促進する経済効果などが評価された。
VWU型ベニヤウェルダー=橋本電機工業株式会社
 生産性と品質の向上を目指した単板横ハギ機で、単板全面の検知装置の開発、ナイフ交換やホットメルト接着剤塗布部の部品メンテナンスの作業性向上などの技術水準と独創性、それらによって人手不足や熟練者の減少を克服して生産性や品質を向上させる経済効果が評価された。
                                                                     Woodfast '17-11
  日 本 木 工 機 械 展
ウッドエコテック 2017
併催
ウッドワンダーランド 盛況裡に閉幕
 わが国で長い歴史をもつ (一社)日本木工機械工業会(名古屋市中区大須4-11-39、井本希孝理事長、
飯田工業㈱社長)主催の「日本木工機械展/ウッドエコテック2017」が、2017(平成29)年10月27日から
30日までの4日間「ポートメッセなごや」(名古屋市港区)会場で開催された。川上から川下まで木に関す
るあらゆる産業の技術とソリューシンが一堂に会するイベントとして、「木の国・日本」“木っとつながる
テクノロジー/木っとみつかるエコロジー”をテーマに掲げた。また、併催の「ウッドワンダーランド」も賑
わいをみせた。
講評を述べる奥村正悟審査
委員長(京都大学名誉教授)
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 栄えある技術優秀賞の5点
3Dターニングマシン 旭川機械工業株式会社
ノバパネル プロ 兼房株式会社
無人製材設備“クリアシステム i ”キクカワエンタープライズ株式会社
全自動カービングサンダー DKSHジャパン株式会社
テープカット左から桑原柾人、安居実、工藤勉、井本希孝、河村たかし、宮澤俊輔、クリスチャン・ファイファ、渡邉将人の各氏
技術優秀賞のブロンズ像について
 「アフロディーテ」ギリシャ神話の一人。美と豊穣をつかさどる女神アフローディーテの誕生と人類の技術発展の喜びを兼ね合わせ万物より感嘆をもって祝福される。(制作:亀谷政代司氏)
撮影:会期中エントランスホールに展示

VWU型ベニヤウェルダー 橋本電機工業株式会社