テープカット左から クリスチャン・ファイファー、桑原柾人、井本希孝、安居実、渡邉将人の各氏
 わが国で長い歴史をもつ (一社)日本木工機械工業会(名古屋市中区大須4-11-39、井本希孝理事長、飯田工業㈱社長)主催の「日本木工機械展/ウッドエコテック2015」が、2015(平成27)年11月11日から14日までの4日間「ポートメッセなごや」(名古屋市港区)会場で開催された。川上から川下まで木に関するあらゆる産業の技術とソリューションが一堂に会するイベントとして「木の国・日本、“木遣いでオモテナシ 見せましょう木の力”」をテーマに掲げた。
  日 本 木 工 機 械 展/
ウッドエコテック2015 盛況裡に閉幕
講評を述べる奥村正悟審査
委員長(京都大学名誉教授)
                                                                   Woodfast '15-12
 同展には、木材加工機械をはじめ刃物及び工具、乾燥機器、バイオマス関連機器など林業・木材関連の最新技術が集結した。また、時代を先取りするセミナー・シンポジウム・講演会や大学や研究機関による特別展示を併催するなど、総合的な木材産業技術展を目指した。会期中の来場者は1万7000人を超え、前回展2013(平成25)年の来場者数を約15%上回る、木材産業全般の好況を反映してか久々に賑わいをみせた。
 主催者発表による出品者数は、147社(団体・機関含む、前回展166社)、出品小間数837小間(同761小間)、出品国数8ヶ国・地域、参加企業は、日本、ドイツ、イタリア、オーストリア、ロシア、カナダ、韓国、台湾の多くを数えた。
 今回は、CLT(直交集成板)という話題の材料に対応する加工機械やミニハウス、カットサンプルなどが会場内に増え新たな牽引力となったようだ。それに呼応するかのように出品物や来場者数は共に増え、開場と同時に来場者は日毎に絶えることなく担当者は対応に追われる光景も見られた。開場前にささやかれた出展者間の今回展はどうか?の心配を払拭していたようだった。長年出品していたメーカーも今回は小間の縮小がみられたが、その要因は生産が多忙を極め出品機械の調整がつかなかったとも聞くなかで、特に輸入機械・機器を取り扱う企業の出品機も増えたのは特徴的なことだった。なお会場は、展示ホール3号館をフルに使用して、ホール内に産官学展示コーナー、特別展示コーナーやオープンステージでのミニトークライブなど盛りだくさんな内容にイベント効果を上げていた。
 なお、次回は2017年11月中旬の開催を予定している。
 会期初日の11日、午前8時45分から交流センターエントランスホールでオープニングセレモニーが開かれた。まず同展の井本希孝実行委員長(飯田工業㈱社長)の開会宣言に続きテープカットが行なわれた。
開会宣言
 今回は出品者も増え、木材産業関連の機械も揃ったことに感謝しています。そして全国の研究機関よりの参加や、次世代を担う地元高校生の見学に夢と希望のある産業であること、また、日本を代表する展示会として、今日からの四日間が皆さんにとって幸せな空間と時間を感じ取っていただければ幸いです、と開会宣言をした。
 テープカットは、井本希孝実行委員長(飯田工業㈱社長)、安居実日本木工機械輸入協会会長(ホマッグジャパン㈱社長)、桑原柾人全日本木工機械商業組合理事長(フソー㈱社長)、渡邉将人日本機械鋸・刃物工業会理事長(兼房㈱社長)、リグナ2017広報/クリスチャン・ファイファーの各氏がハサミを入れ、開会を祝った。

 技 術 優 秀 賞 5 点 決 ま る
 技術優秀賞は12日に発表され、翌13日午前11時から贈賞式が館内特設ステージで行なわれた。受賞者には賞状と特製ブロンズ像が贈られ、その栄誉が称えられた。
 この技術優秀賞は、木材産業および関連産業の発展に寄与する独創的かつ付加価値を高める優秀製品を顕彰するため、1973年に創設され、今回で22回目となる。
 その審査は、木材・木材加工の学識経験者および木工機械の需要家からなる14名の審査員が行ない、出品者から提出された書類を各審査員が評価する個別書類審査、会場で出品物の検分と出品者からの聞き取りを行う合同現物審査を経て、技術優秀賞にふさわしい出品物として次の5件を技術優秀賞に選考した。
技術優秀賞審査講評
審査員長 奥村正悟・京都大学名誉教授
 選考は、(1)技術水準(2)独創性(3)経済効果の3項目を中心として出品物を評価した。技術水準には、品質、開発の合理性や難易度のみならず、安全や環境に対する配慮も含まれる。独創性には、部分的に優れた独創性があるものや萌芽的であっても将来性が見込めるものも含まれる。経済効果については、付加価値や歩留まりの向上、省資源・省エネルギー・省力化、廃棄物処理、木材の有効利用への寄与などが含まれる。今回選考された5件(五十音順)についての評価は概ね以下の通りであった。
新型帯鋸製材システム「NTBシステム」=株式会社大井製作所
 従来の目立て作業を省ける新しい帯鋸を開発するとともに、その帯鋸を使って高速製材できる帯鋸盤を開発したもので、新しい帯鋸開発の独創性、システムを実用化した技術水準、普及した場合の経済効果などが評価された。
SFソー HVタイプ=兼房株式会社
 丸鋸が特定の回転数で大きく振動して挽き材面が粗くなることを抑止するために開発された超硬チップソーで、振動抑制のための原理、それに基づいた実用化の技術水準、ユーザー検証から期待できる経済効果などが評価された。
フレックスライン=ホマッグジャパン株式会社
 寸法・色が異なる部材の寸法決めと縁貼を自動化したシステムで、バーコードを利用して多品種に対応するシステムの完成度の高さと経済効果、今後の生産システムの方向性を示す先進性などが評価された。
次世代加工機 MPS-61=宮川工機株式会社
 住宅用部材から非住宅用大断面集成材の加工に対応できるプレカットマシンで、各種の断面サイズに対応できるようにする開発意図の明確さ、多関節ロボットと傾斜架台を採用したシステムの完成度の高さが評価された。
ハイスピードスカーフコンポーザ4型=株式会社名南製作所
 単板積層材(LVL)用の長尺単板を製造するための、熱硬化性接着剤に対応した連続式単板接合機で、接合部を熱圧しながら搬送する装置の独創性と技術力、機械の完成度の高さなどが評価された。
 以上の5件以外では、非接触で含水率や強度を推定する装置、粉塵対策を徹底したNC加工機、バイオマスを熱源としたボイラなどが選考過程で注目された。
 今回の審査では、何度も受賞歴のある出品者からの出品物を選考されるとともに、海外製品が初めて含まれている。国内の展示会で海外企業を顕彰する意義については議論もあるが、この技術優秀賞を真に国内企業の振興に役立てていくためには、海外製品も含めて申請件数を増やすことが必要であり、その方向で引き続き検討されることを望みたい。→

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 栄えある技術優秀賞の5点

新型帯鋸製材システム 株式会社大井製作所
SF Saw HVタイプ 兼房株式会社
フレックスライン ホマッグジャパン株式会社
次世代加工機MPS-61 宮川工機株式会社
ハイスピードスカーフコンポーザ4型 株式会社名南製作所
→また、木材利用の拡大、国産材需要の拡大が叫ばれて久しいが、木材の利用は木工機械を含めた機械システムを抜きにしては始まらない。経済性、効率性、生産性にしっかり裏打ちされた機械やシステムが存在しない限り、真の意味で木材利用の拡大はあり得ない。最近話題になっているloT(モノのインターネット)は加工・生産システムの一層の高度化を求めるものであり。木材加工の分野においても避けられない流れである。日本木工機械工業会が主催するこの展示会が、このような新しい技術や情報の発信、同業あるいは異業種間の交流などを通じて、木材産業を発展させる礎となることを大いに期待したい。



左から受賞した大井製作所、兼房、ホマッグジャパン、宮川工機、名南製作所を代表して、賞を手にする各氏
技術優秀賞のブロンズ像について
 「アフロディーテ」ギリシャ神話の一人。美と豊穣をつかさどる女神アフローディーテの誕生と人類の技術発展の喜びを兼ね合わせ万物より感嘆をもって祝福される。女神の手は、名誉を讃える月桂樹の枝を持ち、衣も軽やかに舞い伸び上がっていく形態とし、未来へのさらなる発展の可能性を予感させるような像とした。(制作:亀谷政代司氏)